内泊漫画狂時代SP

久しぶりに地元話です。今回は懐かしくて思い出深いガキンチョ話です。


○黎明編 元祖絵本マンガ『ガンバルン君』
僕らがガキの頃、一大マンガブームが起こった。読むのではない。描くのだ。
発起人はおなじみの暴れん坊・Dやんである。
当時、駄菓子屋にはスケッチブックなるものが売っておらず、あるのは学校で使うA5版の学習帳だった。そこでDやんが発明したのは、この学習帳をなんと5冊分張り合わせ、そこに1ページ1コマを目安にマンガを描き、一冊の分厚いマンガ本を作るという、いまだかつて誰もやったことのない荒業であった。先生に見つかったら怒られる軽犯罪でもあった。
それまでマンガなんて描くとしてもノートの端っこにチョロッと描く落書きか、紙を数枚ホッチキスでくっつけただけの質素な冊子ができるのが精一杯であった。
ホチキス冊子の先陣を切ったのが、二つ上のタカボンという奴で、この男は現在の黒井唐州である。
タカボンが描いたのは『ガンバルン君』という得体の知れないカエルみたいなへぼいキャラが延々出てくるだけのストーリーもヘッタくれもない絵本であった。一応マジックで着色はしてあるものの、ストーリーがないので全体的に意味不明。長い間うちの本棚の隅に保管(というか置き去りに)されていたが、いつの間にか僕が勝手にセリフを書いたりしていた。
『ガンバルン君』誕生が、1977年頃とすると、そのわずか2年後にDやんがノートマンガを開発したのだ。


○実践編 『イヌマン』の誕生

おそらく、うちの集落に住む子供の中で、本気で漫画家になろうとしていたのはDやんだけだったのかもしれない。
Dやんの描く主人公はいつもヒーローであった。代表作の『イヌマン』は、彼が創作した最高で最強のスーパーヒーローで、そのキャラ(犬バージョン)がトレードマークにもなっていたもんだ。
イヌマンには、犬バージョンと人間バージョンに分けられ、A5版で描いたのが人間バージョンだ。
このキャラは、Dやん自身が握り飯を食うと変身するという異色の設定。その影は白い。脇役には普段遊んでいる実在の友達が登場する。一番最初に出てきた「力のない少年」というキャラが僕だった。
人間版イヌマンにはこれといって悪も出ず、活動範囲は近所といういたって簡単なストーリーである。

対するノーマルのイヌマンは、なんとB5のノートに出世。
いきなり果たし状を持った悪者が、イヌマンの家を訪れるというプロローグ。
Dやんのすごいところはそれとまったく同時進行でもう一つのイヌマン(エピソード2)を描いていたことだ。
そっちのほうはいきなり見開きで、飛んでるイヌマンと敵のタンクが大決戦している場面から始まり、しかも完全にイヌマンが敗退し「おぼえとけよ~」と嘆きながら去っていくという設定だった。
1ページ目から主人公がまさかの玉砕。僕は子供心ながら「この人(Dやん)本気やな~…」とたいそう感心したもんだ。
しかしそんな天才Dやんの最大の弱点が、飽きっぽいという性格だった。こんなに多くの作品を生み出したわりには全部未完のままなのだ。
彼の頭の中には湯水のようにアイデイアが沸くのか、すぐ別のマンガを描き出すのであった。


●末期編 Dやんの引退
イヌマンシリーズの後描いたのが、イヌマンよりもっと質素になったヒーローを描いたスペースファンタジー『ツマン・シマン・ツシツシマン』であった。
これは顔にそれぞれ「ツ」「シ」と書かれただけの丸い奴が合体して「ツシツシマン」となって宇宙から来た悪者と戦うだけの話。この作品を思いついたときに、いち早く僕の報告に来たことを昨日のことのように覚えている。
ところが、いかんせん彼の筆記はとにかくマンガ文字で、なおかつ「ツ」が「シ」に見えてしまい、結局誰からも「シシシシマン」と読まれていた。

さてそんなこんなでそれもすっかり飽きてしまった頃、今度は『まんまるチーズマン』というコロ助系のキャラを発明し、この当時覚えたてのローマ字で自分の名前を表紙に刻みこんで、えらい大人に見えたもんだ。
しかし悲しいかなこのマンガはなんとこの表紙のみで終わってしまった。

この他、タイトルだけがめちゃインパクトのあった『みぬくいニンニキニンニン』という学園ものも存在したが、『みぬくい』とは何か結局わからずじまいであった。同時期によきライバルとしてマンガを描いていた僕は、そのタイトルだけパロった『パン食いパンパカパンパン』というのをやったが、これも内容はすっかり忘れてしまった。
一方、『ガンバルン君』以降のタカボンは、その後ポパイをパロった『ペパイ』や学園モノの『ちんみ天近(てんそば)』などを学校新聞で連載したが、結局長続きはしなかった。僕ははた万次郎に影響され『びっくら君』というのを描き、そのキャラはいまだに脇役でたまに描いている。
Dやんは小学校卒業と同時にマンガも卒業し、その後すっかり不良になってしまった。しかし、彼の作ったキャラたちは、僕の中で永遠に生き続ける。そして、たま~に実家でDやんと再会した際にこの話題を出すと、Dやんも嬉しそうに当時の記憶を完全に蘇らせて、ガキの顔に戻っちまうのであった。



★★内泊が生んだ天才マンガ家Dやんの生み出したキャラたち(ガンバルン君は黒井唐州作品)※僕(顔)が描きました。左上はケイゾウ作『ぞうマン』
画像




顔画別館対談●第10回「内泊マンガブーム発症」

黒・どうも、雑木林木津々木(ぞうきばやしきつつき)です。
顔・こんばんわ、炭子部山貝十(たんこぶやまかいじゅう)です。
黒・懐かしい名前ですね~。
顔・もう何年前かねコレ?
黒・俺とお前がポートピア見に行った頃やから…
顔・1980年ですよ。正確には僕が三年生終わっての春休みね。
黒・あの時は俺の叔父さんの大型トラックに乗って3日がかりで大阪着いてね。
顔・結構長旅でしたよね。あれ元々飛行機で行く予定やったんやな。
黒・そうやったっけ?
顔・わしは毎年春休みに祖父母の家に遊びに行くのが恒例となっとったんやが、その年だけ急遽飛行機のチケット取れんので中止になりかけたんやな。そしたらたまたまあんたんとこの叔父さんが長距離トラックで帰っとって、小学校の卒業式の夜中に大阪方面へ発つとかでね。二人乗せてもらおうってことで。
黒・俺、ポートピア行きたかったけんな~。
顔・俺は全く行きたくなかったね。
黒・ハハハ、そうか。俺パンダ見たかったもんな~。
顔・あん時にあんたんとこのおっちゃんがヤングジャンプ持っててね、初めてはた万次郎知ってね。わし相当影響されたがな。
黒・『ナンダくん』やな。それで『びっくら君』描いたん?
顔・そうそう。ほとんどパクリやがな。ほんでね、そん時におたがいペンネーム作ろうとなってね。夜中に布団の中で…アホやがな。
黒・俺、当時、雑木林で最初に描いたんが『ぺパイ』やったかな~。
顔・ハハハハ!『ペパイ』て! 『ポパイ』のパクリや。四角いメガネかけとってな。すげえベタな4コママンガでジョギングしてるペパイの前を牛乳配達の自転車が通過して、最後のコマで「ゴクゴクゴク」てペパイが牛乳飲んでるような。
黒・ハハハハ!お前、よう覚えとるな~。
顔・パターン一緒(全部なんかパクってる)ねんもん。あと新聞配達が通過して新聞読んでるペパイとかね…フフフ。
黒・俺あの当時から一貫しとったもんな~。あれ描いた後で雑木林になったんかな?
顔・あんたはそういう名前つけるの得意やねん。俺『びっくら君』の時はまだ本名やったよ。で、なんかインパクト欲しかったんで、雑木林に対抗できるのはたんこぶ山やと。
黒・ハハハ。その発想はどっからきたん?
顔・昔お楽しみ会(所謂学年別学芸会)ん時にみんなで『西遊記』やったんよ。勿論主役はシゲザル(猿ソックリの同級生)でね。俺「たんこぶ山に住む妖怪」演ったんや。
黒・おお、そうか。ほんで妖怪の上は「怪獣」やと。
顔・字簡単にしてな。ほいであんたがサインまで考えてね。
黒・「貝」の字が十個並んどるやつな。
顔・正確にはピラミッドのようになっとんのね。
黒・俺、その後すぐ「黒井烏」に改名したんやな。(95年・ミニコミ「戒王」で「唐州」に改名)
顔・まだ早いわ。その前に「何亭苦労(なんていくろう)」があったわ。
黒・何亭クロウ(笑)。それ『ペパイ』描いたスケッチブックの表紙に載ってたカラスのキャラクターやな。
顔・「パクリやんか…それ~」ってわし文句言うたもん。そしたら「変える」って言いだして、「黒井烏」と「白井烏」とどっちがええ?って聞くから、俺「黒井!」って言うたんや。
黒・考えてみたらそのままやないか。
顔・でね、多分黒井烏の一作目が『ちんみ天近(てんそば)』やったんやがな。
黒・前も言うたけど『西浦ヤットデタ新聞』(対談参照)連載につき一回で終了したけんな。
顔・ハハッハハ。
黒・『ガンバルン君』はいつ頃やったっけ?
顔・『ガンバルン君』は…フフフフ…この会話なんやねんもう…『ガンバルン君』て、なんちゅう平和な名前やねん。
黒・幸せになるタイトルやろ?
顔・あんたが初めて描いたマンガですよ。記念すべき第一作。あれ確かあんた二年生ぐらいやろ?当時「君」という漢字書けて、俺スゲ~って思うたもん。
黒・あれ、お前んとこの二階で描いたんやったっけ?
顔・そうやな。
黒・俺毎週お前んとこの二階に上ってたな~。
顔・俺んとこの二階が改装される前になんか変な二畳ぐらいのミシン部屋があってな。そこわしらの作業場にしてミシン台の上でセッセとマンガ描いてた。
黒・アレ?ミシンやったか?オルガンやなかった?
顔・オルガンはミシンの横にあったよ。だから二人一つづつ机があったんや。オルガンは確かシゲ兄さんとこから譲り受けたんやったかな?忘れたけど。
黒・お前、鬼太郎のパクリみたいなのも描いてなかったか?
顔・ああ『ゲゲ郎くん』な。それはだいぶ後になってからやがな。
黒・俺6年生ぐらいやったかな? 当時タケさんでちっちゃいノートかメモ帳が流行ってな。
顔・俺らの中では大ブームやったよ。あのサイズのノートって今あんまり売ってないもん。俺、あのノート買いまくったもん。
黒・俺確かあの時はナントカすずめっていうペンネームやったような。
顔・ああ、そうやがな。表紙にすずめの顔描いてたもん。でもあんたの悪い癖は、描いて気に入らんとすぐ破るやん。俺は丁寧に消して描き直すから分厚さは最初のままやけど、あんたのは出来上がり薄っぺらやねん。結局『ペパイ』もしまいには破いたやろ?
黒・だから自分の作品が残ってないんか。それで気がついたわ。
顔・そもそも内泊マンガブームの火付け役は、学校では俺て言われてたけど、本当はDやんやねんな。
黒・Dやんはお前より描いとったんやないか?
顔・そうやがな。また描くのが速い速い。アッという間にノート一冊埋まるねん。ほいでDやんのスゴイとこは『イヌマン』シリーズって何本も描いてたやろ? わしら飽き性やから同じマンガ二冊も(描く気が)持たんがな。
黒・Dやんやったかな、ノート何冊もくっつけてすごい分厚い本作った元祖は?
顔・Dやんやね。あれね、実は裏話があってね。(前回登場した)ぞうマンと幸一らと、俺に内緒で「内泊マンガ少年団」っての結成してな。知らン間に描き溜めてたの。ほんでそろそろええやろ~って思った時に俺に告白してね。「実はこういうの描いてるんや」って見せられて、すげえ衝撃くろうたもんね。
黒・ノート5冊くっつけとったんかね? あの当時にあの分厚さは衝撃やったな。
顔・しかもDやんの恐ろしいところは、そのノートが自由帳やなくて全部学習帳やねん。だから横線や縦線がもろ入ってんのな。あれは授業に対する反逆とも取れるね。
黒・Dやんやったらやりかねんな。なんせ仏壇が飛ぶ家やけんな~。
顔・あれはほんと衝撃受けた。しかも1頁1コマやからすぐ二冊目いくねん。ぞうマンも『ぞうマン』っての描いてたけどDやんにはとうてい追いついてなかった。
黒・Dやんのマンガは、出演者も身近な人らやっつろ?
顔・そうそう。一番最初に俺が登場するんやけど、なぜか鉄アレイ持っててね。周りから「力がないね~」とか言われてんの。俺の顔も目が「×」になっててホント情けないキャラ。ケイゾウ君なんかは結構いい顔してる。で、イヌマンてのは自分が変身した姿なんやけど、面白いのがなぜかほっぺに無数のご飯粒がついててね。
黒・アハハハッハハ。それがトレードマークや。シュールやな~。
顔・シュールやがな。ご飯粒つけたヒーローっておるか?
黒・おにぎり食べよる間しか変身できんのな。あのキャラ、途中から顔、犬になったやろ?
顔・多分第二シリーズ(イヌマン対○○」)からやね。あの犬の顔は最初のイヌマンの着てる服にプリントされてて、当時Dやんのサインとしても有名やったんやね。
第二シリーズになって覚えとるのが、冒頭イヌマンが家で寛いどったらなんかわけわからん敵キャラが歩いて果たし状持ってくるとこから始まるんよね。それと同時進行で描いてた第三弾なんか、いきなり見開きでヤマトみたいな戦艦に攻撃されたイヌマンがボロボロになって「おぼえてろよ~」から始まるっていう…
黒・ハハハハ!それもすごいな。やっぱDやんは純粋にマンガ描くのが好きやったんやろな?
顔・その後描いたのが『ツマン・シマン・ツシツシマン』ってやつで、顔に「ツ」「シ」って書いてる丸顔のヒーローがおって二人合体したら「ツシツシマン」になるっていうね。でもDやん「ツ」も「シ」も一緒やねん。
黒・ハハハ、「シシシシマン」やがな。そうか、一貫してヒーローものやったんやな。
顔・その後に描いたのが『マンマルチーズマン』でね、これは未完に終わった。多分最後の作品じゃなかったかな。しかもシャレてたのがペンネームもローマ字で書いてるんよね。当時ローマ字習いたてやからどこかで活用したかったんやろ。
黒・すごいな~。考えてみたらDやんが一番の俺らのライバルやったんやな。
顔・そやね。今考えても画質から発想からDやんには勝てんと思うわ。俺が描くマンガはほとんどDやんの二番煎じで、Dやんのマンガ借りて見本にしてたもん。
黒・あの人、どこで道はずれたんかね?
顔・途中でスパッとマンガやめたからね。不良になったから…。でも他の人種とは違うイキな生き方してる部分もあったよ。夏休みに俺が新聞配達しとって、小学校まで自転車で新聞持って行きよったら、Dやんが小学校前の海にゴムボート浮かして、のんびりコロコロコミック読んでるんよ。あれはビビッたね~。
黒・朝から泳ぎよったんじゃなくって?
顔・違うがな。ちゃんと普段着のまま、本当に有意義に浮いてたわ。すげえブルジョアな読書やがな。またコロコロってのがええね。羨ましかったわ~。配達終わってすぐ遊んだもんね。
黒・Dやんは中学ぐらいになるともうモーターボート運転しとったやろ?
顔・あれもビビッたね。俺とケイゾウ君が乗せてもらって、沖の方まで出て泳いだがな。免許持ってないのにめちゃ手馴れとる。あれは親父から動かし方盗んだんやで。
黒・いや、親父が勧んで調教したんやろ。



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